こちらは熊本大学大学院教授システム学学生達がたむろする茶室です

A Tribute to R.M.Gagne

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by スポンサードリンク | 2009.11.15 Sunday | - | - | -
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「株式会社による学校経営」を読んでみた
今出てきたプロジェクトに若干関係しそうなので読んでみた日本政策投資銀行(以下DBJ)によるレポート。2004年なので古いですけど。

株式会社による学校経営を、小学校などの義務教育課程と大学以降の高等教育に分けて考えています。

義務教育課程については「「利益至上主義と教育は相容れない」に代表される様な多くの批判を受け」つつ、高等教育では「、学生のニーズを迅速・的確に捉え、既存の大学の隙間を埋める様にして発展」し、「株式会社が学校運営の主体になることに対しても、特段大きな批判を生んでいない」もよう。

1)義務教育課程:Edison Schoolの事例。

詳細はWikipedia参照。1999年に株式公開するまで至ったが2003年には非公開化、縮小した。Wikiでは経営陣のマネジメントスキルの低さも指摘していますが、それい以前にDBJのレポートにもあるとおり、学校を多数作って売上利益を拡大させるビジネスモデルの高収益化は容易ではないですね。

このモデルは焼き肉チェーンとかマクドナルドとかスーパーみたいな小売チェーンビジネスモデルにちょっと似てます。店舗(学校)開設毎に初期投資がかかり、黒字化に時間がかかります。が、そのうち一定規模になれば償却負担も減るし、原材料仕入のバーゲニングパワーも増す。

なので、
「一定数以上の学校を運営するようになれば、コストを上回る収入が確保でき、物品購入においてもディスカウントが可能となる」
という仮説は半分正しい。

でも、通常の小売りと大きく異なるのは、スクラップアンドビルドが容易でないことでしょう。普通の小売店でも大体何割かは不採算になり、そしたらすぐにつぶして新しい採算店を作れますが学校じゃきっと無理。

つまり、学校運営には規模の経済が働きにくいということです。特に今回のような、eラーニングでなくリアル学校ビジネスの場合は。

ありがちな批判も結構あったようですね:

・ 民間事業者経営の学校は利益を追求するあまり教育の質が二の次になる
・ (本来の顧客である)学生よりも、会社の株主が一番の関心の対象となる

これらのの論点は、株式会社立の場合に典型的に言われそうなネタ。でもこの議論はおかしいのでは?

学校に限らずどの会社の経営もそうですけど、短期的な利益追求は教育(事業)の質を下げますが、長期的な利益追求は利益を次の投資に回せるので教育(事業)の質は上がる。つまり利益追求と教育の質は背反するというのはおかしい。

また2番目の論点も、学生を軽視したら学生(顧客)は来なくなり株主のメリットはないので、経営者にとって学生(顧客)の満足と株主の利益を背反と考える方がおかしい。(前提としてこの議論が成り立つのは不幸にもShort term playerが大株主になった時はありえるけど)。

と、文句をつけてみましたが、株主のプレッシャーにさらされる経営者が、長期を犠牲にして短期の利益を生み出そうと行動してしまう可能性は、やっぱり否定できません。

しかもこの小売店型ビジネスモデルは、いったんうまく成長しても、店(学校)の数を永遠に増やし続けなければ株主が売上利益を満足する成長を上げられず、このプレッシャーで皆息切れし経営者の軸がぶれる、というパターンがあります。非公開化したすかいらーく、タリーズ、牛角、など事例は数知れず。する必要もないのにどういうわけかお上が救済したダイエーなんてのもありました。

この事例をみるに、Edison Schoolは、株式公開なんかせず、丸抱え受託もせず、非公開のコンサルティング会社であったほうが、教育業界の全体最適に適ったのではないかと思います。

ところで、事業として失敗する前は、少なくとも年々校数を増やしてきた事も本レポートでは注目してます。すなわち、いろんな批判はありながら、「既存の公立学校に代わる選択肢を人々が求めた結果」だったということです。

後半では高等教育について触れてるのでまた書きます。
by unon | 2008.08.14 Thursday 21:31 | eラーニング以外 | comments(1) | trackbacks(0)
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この記事に対するコメント

Commented by mtoyon at 2008/09/10 12:18 AM
1 国境を越える高等教育の現状

豪州の大学における外国人学生数の内訳(2007年第1セメスター現在)をはじめとする
統計によれば、国境を越える高等教育が極めて大規模に展開されている。
eラーニングブームの崩壊をめぐる議論から、多くのeラーニングプロジェクトが失敗した。
原因は、供給者側の論理で通学制の伝統的教育機関との「同等性」を主張する戦略をとった点にある。 需要者である学生側はオンラインで提供される高等教育の学位が社会で、通学制で提供されるそれと同等に認められてはいないことをよく知っている。

オンラインによる高等教育提供での成功例を見ると、フェニックス大学については有職社会人に的を絞って、実務的かつコストの比較的低い、ビジネス、経営管理、IT,看護・保健、
教育、心理・カウンセリング等の分野に注力している。 つまり有職社会人という明確なターゲット市場に焦点化した教育サービスを提供することにより、大規模な学生数を確保し、
規模の経済による単価の引き下げを実現している。

2 国際展開に関する課題

国境を越える大学教育の展開に関する課題として、つぎの3点が指摘されている。[1]
・ 我が国の大学の国際展開によって、却って我が国の大学制度への信頼性を損なうことのないよう、質保証の在り方について方針を持つ必要がある
・ 当該国における通用性の確保が必要であり、現地の諸条件に対応できる柔軟性が必要である
・ 大学にとって進出に係るリスク及びコストが伴う

3 インプットからアウトカムへ

「旧来の質保証システムはインプットを重視し、教育機関がどんな使命や方針に基づいて、どんな手順で何を提供しているのかを中心に評価を行ってきた。eラーニングを含む今後の
多様な教育の展開を考慮するに当たっては、学習者が何を学んだかという成果に重点を置いたアウトカムに基づく質保証を考える必要があるとの議論があった。」

4.まとめ

マーケティングの視点からは、供給主導ではなく需要者に焦点化することが何よりも必要ではないか。需要者にとってメリットのある学位、認定(certificate)を教育・学習の帰結
として提供できること。 供給する教育機関にとって授業料や修了者数の規模で業績を評価するといったビジネスの視点からも、供給する側にとっての価値と需要者にとっての価値とが
調和することが必要であろう。 ここでの「価値」は教育機関のもつ教育理念、そしてそこに学ぶ人々が社会で生きていくときの職業に関する価値観との関連性を看過できない。 

なぜならば、背景にエリートからマスへ、マスからユニバーサルへという変化がある。 
ところが我が国が高等教育として存在感を増す、という概念を、さらにそれが実現できているかどうか判断できる施策と尺度に分解しようとするならば、教育機関による高等教育を終えた人々が、
1) 国際的に通用するか 2) 引き続き、働く環境、市場が用意されているかを問われる。

プロフェッショナルとして生きていこうとするときのことを考える。 どこ(どの機関)を卒業したのかということが、修了結果、何をできることを保証するかに等しい程度に、その機関が能力を保証できることが望ましい。 ところが、我が国では高等教育の量的拡大と同時に入学試験制度の多様化によって入口での質の保証は機能しなくなっている。[2] 筆者が専門としている情報系教育については、一口に情報系学科を卒業したといっても、アウトカムとして学生が何をできるようになっているか、その実態調査結果[3] を見ると、「数とその表現」など基礎的な知識を見ても実に多様である。 このアウトカムにターゲットをおいて目標を提供しようとする施策がある。

「学習者が何を学んだかという成果に重点を置いたアウトカムに基づく質保証」の議論は、eラーニングに特化した話ではなく、高等教育全般に該当する議論であると考える。 



[1] 我が国の大学の国際展開及び外国の大学の日本校等に係る質保証等の在り方
国境を越えて教育を提供する大学の質保証について
− 大学の国際展開と学習機会の国際化を目指して −
<審議のまとめ>
平成16年3月29日 国際的な大学の質保証に関する調査研究協力者会
http://www.mext.go.jp/b_menu/public/2004/04032901/001/004.htm

[2] 文部科学省中央教育審議会大学分科会制度・教育部会「 学士課程教育の構築に向けて 」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/080410
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